この記事の結論
精進揚げは、主に忌中にいただく精進料理の中の揚げ物のことです。動物性のものや刺激の強いものを避けた材料を使います。
精進揚げとは
精進揚げは 「しょうじんあげ」 と読みます。
法要等仏事で用いる 精進料理の1つ です。
精進料理とは
精進料理は 日本に古くから伝わる食文化 です。
仏教を歩む人が食す料理 になります。
主に、 動物性の食べ物を用いらない和食 です。
仏教では殺生を控えるため 、動物性の食べ物を使いません。
他にもニンニクやネギなど 刺激のある食物を避けることで、人間の煩悩への刺激を無くす とも言います。
このように、動物性ではなく 植物性の食べ物を用いる粗食 のことを精進料理と言います。
身近では僧侶が食べる食事もこちらになります。
精進料理に関しては、こちらもご覧ください。
お盆の精進料理とは?お膳立てやお盆のお供え物も!おすすめの料理も紹介
第三人生編集部
精進揚げとは
精進揚げは、精進料理の中でも 食材に衣をつけて油で揚げたもの を指します。
動物性の食品を使うことが出来ないので、 一般的な揚げ物で用いる卵などを避けます。
また、だしを使う場合はカツオではなく昆布のものを使うなど細かく配慮されています。
忌中(きちゅう)となる 四十九日まで は、肉や魚の 動物性食品を食べれないのが仏教の教え です。
主にこの 忌中期間に食べる料理 になります。
精進揚げの由来・歴史
精進料理
精進揚げの歴史
精進料理は 中国が由来の料理 です。
仏教の伝来とともに伝わりました。
そして、 奈良時代や平安時代の頃、各地で様々な宗派が生まれました。
例えば比叡山では天台宗、高野山では真言宗です。
この時、 各宗派で料理が決められた のです。
この 宗派ごとの正式な料理が精進料理 です。
元々は宗派ごとの料理でしたので、 精進料理には沢山の種類があり、調理法も様々 になります。
現代にも残る 精進料理の基礎はこの時 に形成しました。
その後の 鎌倉時代や室町時代で全国に精進料理が伝わり、精進料理の細かな種類が出来た のです。
つまり、精進揚げはこの時に生まれました。
由来として有名なのは、曹洞宗で食についてを定める 「典座教訓」 があります。
精進揚げの由来
「揚げ」はもちろん料理法である揚げ物からきています。
ここでは「精進」の由来や意味について説明します。
先程述べたように、精進料理は仏教を歩む者たちが食す料理です。
この 仏教を歩む者は、つまり仏教を極める者 という事です。
仏教を極めることを「精進する」と言います。
このことから、「精進」という文字が付くようになりました。
精進揚げと精進落しの違い
精進料理
本来の精進落し
精進落しは、 遺族が法要後に準備する食事のこと です。
遺族だけではなく、僧侶など 葬儀に関わってくださった方に向けての食事 です。
先程少し述べたように仏教では、故人が亡くなって直ぐは動物性食品を断つ精進料理を食べます。
この 精進料理から普段の料理に戻す区切り として精進落しが生まれました。
精進落しの現状
本来、精進料理は基本的に四十九日までの期間に用いりました。
四十九日で納骨することが多く、忌明けとなるためです。
納骨するまでは、粗食にし慎んだ行動しようという考えから精進料理を用いります。
しかし時が経つにつれて、 精進料理を用いる期間が初七日に変化 し定着しました。
現実的に四十九日までというのは難しいからです。
そして精進落しは 初七日の法要で僧侶の方々に御礼するための場 という認識なりました。
地域によっては、火葬後関係者に食事を振舞う場という認識のところもあります。
精進落しの共通な認識は、 故人の供養を願う ことと 関係者へのお礼 になります。
精進落しと精進揚げの違い
精進落しが何かわかると、精進揚げとの違いが分かるでしょう。
精進揚げを含む精進料理から、通常の料理に戻る時最初に食べる料理を精進落しと言います。
つまり 動物性食品を使わない料理が精進揚げ 、 動物性食品を用いる料理が精進落し です。
実際に精進落しで用いる料理は、お寿司や懐石料理などが一般的です。
精進揚げと天ぷらの違い
天ぷら
精進揚げと天ぷらの大きな違いは、用いる食材・調理法 です。
食材の違い
精進揚げでは、仏教の教えから 動物性の食材や刺激のある食材を使うことが出来ません。
天ぷらは食材に制限は無く、エビなどの海鮮類からサツマイモの野菜類まで、 幅広い食材を揚げます。
一方精進揚げは魚や肉を控えなければならないので、 野菜中心に揚げたもの になります。
イモ類やナス、椎茸などのキノコ類や、タケノコ、蓮根などが主に用いられます。
精進揚げと天ぷらの 大きな違いはこの揚げる食材 です。
天ぷら料理としても、野菜を揚げたものは精進揚げと言う場合もあります。
調理法の違い
調理法として 手順に違いは在りません。
主に、 揚げる作業で使うものが変わります。
天ぷらを揚げる際は衣を使います。
衣は卵を使いますが、 精進揚げでは卵を使うことが出来ません。
そのため、衣は小麦粉と水だけを使うのです。
また、揚げ料理では様々な場面でだし汁を使います。
だし汁はカツオや昆布などがありますが、 精進揚げではカツオのだし汁は使うことが出来ません。
このように、精進揚げでは揚げる食材以外でも動物性食品を避ける必要があります。
精進揚げの献立
精進揚げは動物性の食材と刺激のある食材を避ければ大丈夫です。
そのため、意外と様々な食材を使うことが出来ます。
ここではよく用いる食材をご紹介しますので、是非作る際は献立の参考にしてください。
夏の場合は夏野菜を用いるなど,、旬の食材を使うと良いでしょう。
また、野菜中心のため 色が偏る可能性が高い です。
野菜の緑やキノコの茶などに偏り易いので、赤の食材などを用いると良いでしょう。
ナス
かぼちゃ
トマト
人参
ゴボウ
サツマイモ
インゲン
青じそ
エリンギ
椎茸
筍
蓮根
オクラ
パプリカ
玉ねぎ
三つ葉
精進揚げの作り方
手順・流れ
精進揚げの作り方をご紹介しますので、作る際はぜひ参考にしてください。
普段の揚げ物とほとんど変わりませんが、違う点もあるので注意が必要です。
ここでは、全て 4人分 でご紹介します。
材料
衣
食材 分量
小麦粉 1/2カップ
水 1/2カップ
ベーキングパウダー 小さじ1/3
サラダ油 適量
片栗粉 適量
揚げる食材(例)
食材 分量
かぼちゃ 200g
ナス 1本
蓮根 1本
しそ 4枚
人参 1本
手順
揚げる食材を切る
衣をつくる
食材に片栗粉を付ける
揚げる
油をふき取る
1.揚げる食材を切る
それぞれ 食べやすい大きさ に切ります。
かぼちゃは種などを取り除き、薄めのくし形などが良いでしょう。
ナスは半分に切って切り込みを入れ水にさらします。
最後は水気をふき取っておきましょう。
蓮根は薄さ10㎜程の輪切りにし、酢水にさらします。
こちらも最後は水気をふき取りましょう。
人参は斜めに薄く切ってから、細切りにしましょう。
2.衣をつくる
小麦粉・水・ベーキングパウダーを混ぜて衣を作ります。
3.食材に片栗粉を付ける
4.揚げる
中火(170°)程で熱したサラダ油に、2で作った衣を付けた食材を揚げます。
5.油をふき取る
キッチンペーパーなどで油を軽く取り除き、お皿に盛り付けます。
これで完成です。
精進揚げを食べるときの服装
49日の参列者の服装
精進揚げを含む精進料理を食べる際は、基本的に法要や法事の後になります。
ですので、 葬儀後そのままの服装で構いません。
喪服の際は喪服、準喪服の際は準喪服で大丈夫です。
特に 改まった決まりなどはありません ので、安心してください。
しかし、儀式が終わったからと言って普段の服で良いわけではありません。
精進料理を振舞う場は、儀式の一環と考えた方が良いでしょう。
故人や、僧侶の方、参列してくださった方、親族の方に感謝を伝える場ですので、 正式な服装 が適しています。
家で身内だけで頂く場合も、ある程度正しい服装が良いでしょう。
もともと、精進料理は行動を慎むことが基にあります。
服装もしっかりと行動を意識したものを選びましょう。
精進揚げを正しく知る
ここでは精進揚げについてご紹介しました。
精進揚げは 日本の伝統的料理、精進料理のひとつ です。
精進料理は 仏教の教えに基づき 、肉や魚などの 動物性の食材を用いらない料理 です。
仏教を歩む者は、謙虚に生き行動を慎んで修行を積みます。
そのため、 殺生を感じさせる動物性の食材を禁じます。
他にも、 修行の妨げとなるような刺激の強いものも禁じます。
ニンニクやニラがこれに当たります。
親族が亡くなった際、 四十九日までは喪に服し行動を慎む方が良い としています。
四十九日で 納骨 し、忌明けとすることが多いためです。
このことから 忌明けまでの期間は精進料理を用いりました。
しかし今の世の中、四十九日まで精進料理は難しいものです。
そのため、 初七日まで精進料理を用いる ように変化しました。
精進料理から普段の料理に戻る区切りとする会を 精進落し と言います。
精進揚げを作る際は、禁じられている食材に気を付けて作るようにしましょう。